お知らせとレポート

ネパールの子ども達の暮らしと、迫る気候変動の影響

ネパールレポート (文・写真 そらべあ基金理事 箕輪弥生)

福島の子供たちから贈られたランドセルが想いも一緒に届ける

インドと中国のチベット自治区の間に位置する国、ネパールをご存知でしょうか。エベレストやアンナプルナなどの山々を思い浮かべる方も多いかもしれません。それもそのはず、国土の約8割が丘陵・山岳地帯。高さ6000mを超える山が1300座以上もあります。

ネパールはさまざまな民族が共存しています。民族とカーストが複雑に絡み合い、宗教はヒンズー教が主流ですが、仏教徒やイスラム教徒も存在し、街には多くの宗教の寺院が建ち並んでいて、その多様性には驚かされます。

首都カトマンズからほど近いパタンの街には仏教とヒンドゥー教が融合した建築様式が見られる

今回私は、10年前からネパールの子ども達へ支援を行ってきた一般社団法人LITAのメンバーに同行し、福島の子ども達から集めたランドセルや支援者から寄付された文房具などを届ける活動に参加してきました。

なぜ、福島の子ども達なのか——。それは、2015年4月にネパールで発生したマグニチュード7.8の大地震の際に、福島のある小学生が「ネパールのために何かしたい」と発信したことがきっかけです。2011年に起きた東日本大震災の際に、福島は世界各国からの支援を受けたので、その恩返しをしたいという思いからでした。

地震後に再建されたジャナタ小学校の教室にて

そのため、支援活動の当初は、福島の子ども達が作ったソーラーパネルやソーラーランタンなどを寄付し、設置することから始まりました。現在はある程度、環境が整備されたため、子ども達が必要としている通学用のバッグや文房具などの提供が中心となっています。もちろん、今回ネパールに持参したランドセルの多くも、福島の子ども達が大事に使っていたものです。

山の小学校でにぎやかな式典

民族衣装を着た女子生徒が歓迎の踊りを披露してくれました

今回私が訪れた学校は、ティスティン村にあるジャナタ小学校です。首都カトマンズから12個の段ボール箱を車に積み、ほこりまみれのでこぼこ道を行くこと約4時間、ティスティン村に到着しました。

山の多いネパールだけあって、ジャナタ小学校も急峻な山の斜面に建てられています。そんな山道を1時間以上かけて歩いて通ってくる子ども達が半数を占めるこの地域では、両手が使えて収納も十分にあるランドセルはとても喜ばれます。

当日は、117人の生徒たち全員に、年齢に応じてミニリュックやランドセル、中学生用のカバン、ノート、文房具を手渡しました。それに加えて日本の子ども達が使ったピアニカなども贈りました。

音楽の授業があっても楽器がなかったので、音の鳴るピアニカが大人気

そらべあ基金でも「そらべあ発電所」の贈呈式で子ども達が歌や踊りを披露してくれますが、ここジャナタ小学校でも式典を開いてくださり、国歌斉唱や子ども達の踊りを披露してくれました。日本と違うのは、式典が終わっても踊りは続き、最後は先生方や私たちも一緒に輪に加わり、なお踊りが続きます。最初はとてもシャイな子ども達でも、少し慣れるととても人懐っこく、感情表現も豊かです。

一緒に遊ぼうと持参した折り紙、あやとり、楽器、バルーンアートなどにも夢中になって遊んでいました。ピアニカとギターでネパールの代表曲を演奏すると、子ども達も大きな声で歌ってくれました。ネパールの子ども達は踊りや音楽が大好きなようです。

教室や学校の様子も見せてもらいましたが、驚いたのは英語教育を小学1年生から始めていることです。6年生に少し英語で話しかけてみると、スムーズに返事をする子もいました。最近の教育を受けた若者はとても英語が流暢だそうです。

英語の教科書はとても充実している

活動を続けている団体によれば、パソコンルームやサイエンス・ラボが設置されている小学校もあり、場所によって差はあるものの、教育レベルは確実に上がっているようです。

気候変動の影響を大きく受けるネパール山岳地域

そらべあ絵本も数冊贈呈

式典の後には、そらべあの絵本を通訳の方に頼んで、読み聞かせをしてもらいました。子ども達だけでなく、若い先生も興味深く聞き入っていました。

通訳のDeepaさん(右)が若い先生(左)にそらべあ絵本を説明

気候変動はネパールにも年々影響を与えています。ネパール全土で気温が上昇しており、通訳の方からは「雨季と乾季の期間が変わってきている」という声も聞かれます。農業と観光収入が主要なネパールにとって、気温上昇や水資源の変化は大きな影響を与えます。 特に脅威とされているのが、ヒマラヤの氷河が融けることで氷河湖決壊のリスクが高まっていることです。実際、昨年(2024年)の8月にはネパール南東部のエベレスト街道沿いにあったターメ村が氷河湖の決壊による洪水で土石流に飲み込まれました。これはまだ序章にすぎません。

神々しいヒマラヤの山々も、気候変動の影響に脅かされている

この10年間で、ヒマラヤ山脈の氷河は2010年代に比べて65%早く融解が進んでいます。このままいくと今世紀末までに最大80%の氷河が消える可能性があると予測されています(出典:国際総合山岳開発センター)。

ホッキョクグマが住む北極や南極に加え、ヒマラヤ山脈も大量の氷を蓄えることから「第3の極」と呼ばれています。この「第3の極」が変化することは、洪水、地滑り、雪崩につながります。ネパールだけでなく近隣の山岳地域には5万を超える氷河があり、20億人の生活と自然環境に壊滅的な影響を与える恐れが指摘されているのです。

ネパールの温室効果ガス排出量は世界の排出量合計のわずか約0.027%でありながら(出典:FoE-Nepal)気候変動の大きな影響を受けている現実に、改めて矛盾を感じました。

それでも、子ども達のまなざしは明るく、この子ども達が大きくなるまでにどれだけのことができるか——CO2を多く排出している先進国に暮らす私たちの責任は重大です。